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樹木が大量伐採される

中野区での「哲学堂公園再生計画」と、その問題点について

 緑の少ない中野区のなかの貴重な緑地帯が、平和の森公園と哲学堂公園。この2つの公園で、樹木の大量伐採を伴う開発が市民の意志を無視して進められています。

●哲学堂公園について

 哲学堂公園はおよそ100年前に、東洋大学の創設者でもある哲学者の井上円了氏が、
妙正寺川の北岸の傾斜地を利用し、園内を散策しながら哲学を体験できる場として
創設したものです。緑地が少ない中野区内では貴重な自然の環境が残されています。
約60種類の樹木が見られるほか、日本野鳥の会の野邨隆資氏の10年間にわたる調査で野鳥は50種類以上が観察され、小型のタカ類であるツミの繁殖行動も3シーズン確認されています。昆虫類は古茶武男氏によって380種類以上が記録されています。野生ランの一種、キンランが見られることや、キノコの種類が多いことも、この公園の土壌の豊かさを示しています。

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哲学堂公園で観察したカワセミ

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哲学堂公園で観察したキビタキ

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哲学堂公園で観察したツミ

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哲学堂公園のキンラン

●中野区の「哲学堂公園再生計画」と、その問題点

 この計画は昨年10月に発表され、公園を「都市観光の拠点」にするというものですが
http://kugikai-nakano.jp/shiryou/171011155752.pdf
自然環境保全という点では、多くの問題があると考えられます。
住民向けの説明会で配布された資料では

・「常緑樹の整理」(樹木の約7割が常緑広葉樹で、針葉樹をあわせると約8割に)
・「児童遊園の7本のヒマラヤスギは伐採」
・「妙正寺川沿いの樹木は整理」
・「見通しをさえぎる樹木は整理」
・「園路に影響を与える樹木は整理」
・「景観の回復のため樹木を除去」
・「中野通りとの連続性を持たせる」
・「明るさ確保のため樹木整理」
・「不健全な樹木は伐採」

などさまざまな理由で樹木を「整理」「伐採」すると書かれていますが、
ヒマラヤスギなど一部の樹木以外については、具体的にはどの樹木をどう「整理」するかが
明確にされていません。平和の森公園ですでに現在進行中の、高木・中低木合わせて
約1万7000本という大量の樹木伐採を考えると、哲学堂公園でも同じように自然環境の大規模な破壊が懸念されます。

●樹木が失われることで懸念されること

・ 植物、鳥類、昆虫類など、この地域では貴重な生態系が失われること
・ 夏の暑さ、冬の寒さ、道路などの騒音にさらされ、哲学的な環境が破壊されること
・ 防火林が失われ、防災公園としての機能が低下すること
・ 公園の大部分が傾斜地であり、植物の根が死ぬことで、地盤の安定が失われること
・ 哲学堂公園の100年の歴史を伝える樹木が失われれば、公園の歴史も失われること
 (樹齢およそ100年と考えられる公園内のヒマラヤスギは、
日本が世界に目を向けた明治時代にインドから伝わった樹木であり、
世界の哲学に目を向けた井上円了氏の創設した公園にふさわしいもの)

●手続き的な問題

・ 中野区が、これまでの説明とは異なり、東洋大学と話をせずに進めていたこと
・ 東京都名勝に平成21年に指定されており、その状態を改変すべきでないこと
・ 中野区と住民が一体となってみどりの育成と保護を行うべきとする中野区の
 「みどりの育成と保護に関する条例」に反している可能性が大きいこと

●これまで住民側から行われていること

「公園内の児童遊園と周辺樹木の維持」の陳情書、要望書が区に提出されていますが、
基本的な計画に変更はなく、3300筆の署名陳情についても一会派をのぞき不採択。

●これから行いたいと考えていること

哲学堂公園の自然の価値や、それが今回の計画で大きく改変され、破壊されるおそれもあることは、地元でも十分には知られていません。今年6月に行われる中野区長選も念頭におきつつ、公園利用者を対象とした自然観察会を行うことで、この場所の自然の価値を知ってもらうとともに、この計画に懸念を持つ人たちのネットワークを築くことで、自然環境に十分な配慮を行うよう、区への働きかけを強めたいと考えています。
中村芳生(自然観察指導員)