〜初夏の北海道、ミユビゲラを探す旅〜


2003年6月7日 
フェリー(へすていあ)乗船!
北への旅立ちの日が来た。今回の旅のテーマは
『ミユビゲラを探す旅』。何を夢物語を、と
思われる方がほとんどだろう。しかし、今までの
旅でいかに既成概念や常識というものがあてに
ならないものかを見て来たので、正直難しいとは
思うものの、決して100%不可能ではないと思う。
確かにこれだけ開発が進んだ状況では夢のまた夢
と思うのは仕方がない。正直ヒグマも恐いし、
本当はそんな冒険は今回はしないのだが、大きな
夢をもってフィールドに臨みたいという心意気から
あえて大仰なテーマにした。なにしろどんな出会い
が待っているか判らないのが野鳥や野生動物など
フィールドを探究する楽しみだ。そして、そこには
いろいろな答えが待っている。北の大地に根ざして
奮闘している知己や友に会えるという事も無上の
歓びである。一献の酒を酌み交わし、再会を祝し
夢を語りあいたい。それが私の人生そのもの。
というわけで今回も旅が始まった...

2003年6月8日 
クマゲラ
苫小牧に上陸。既に帯広の両親が待っていてくれ
て、作って来てくれたお弁当を頂く。4月以来の
おふくろの味、おやじの味が美味しくありがたく、
感謝の気持ちで一杯になった。ここからは単独行動
となり、食事が終わると連れと両親は道南へ向かっ
た。私は近辺で野営になる。まだ明るいのでちょっ
と周辺の森に寄ってみることにした。昨年、時期が
遅すぎてフラれたクマゲラが狙い。行くなりほどな
く彼は見つかり、子育てに余念がなかった。心無い
カメラマン対策もしっかりされており好感。明日、
正式に撮影する予定。キバシリの親子連れを確認。
幼鳥は初めて観たが白っぽいのが鮮烈。遠くでは
ツツドリがポポ、ポポと鳴いており、キビタキ、
アオジ、オオルリなど午後15:00とは思えない程に
さえずりが豊かな森だった。今回、かなり緊張した
状態で撮影行に入ったが、それもいきなりほぐれた
ようだ。

2003年6月9日 
クマゲラ
3:30!起き。この時期は朝が早く、結構な早起きを
しても既に外は明るくなっている。夜明け前から
盛んにさえずるアカショウビンを少し探して歩き
回ったが声もしない。話では高速道路が森を分断
してからダメになったということだ。声がしないの
ではアテがないのと一緒なので移動することにして
昨日のクマゲラを観に行った。今日も順調に子育て
していて何回となくユニークな姿を拝むことができ
た。この地ではマナーが守られていて、それなりに
人が集まっていても、鳥を追いかけたり、フラッ
シュを炊くような輩は皆無だったので、安心して
観察できた。注意の掲示と地元のYさんが優しく
マナー監視しているのが良いのだろう。昨年、フラ
れたので今回は絶対にクマゲラを撮らなければと
緊張して臨んでいたのだが、枚数だけは結構撮れた
のですっかりリラックス。ガツガツせずに済む展開
(撮れなくとも追いかけたりはしないが)。そこで
知り合ったKさん、私の兄貴分のNさんの知り合い
のH夫妻と意気投合し、楽しい一時。既に道内を
一周してきたというKさんによれば、道北は花には
未だ早すぎるということだったので、予定を変更
し、別の場所に向かった。

2003年6月10日 
フクロウ
移動した先の朝。やはり3時台起床!車中泊では眠り
が浅く、とにかく眠れない。それで物凄くかったる
いのだが、朝が早いので頑張って早起きする。
内地よりも概ね1ヶ月遅いエゾフクロウの巣立ち直後
の雛たちを撮影。内地から北海道へ移動すれば、
花見を2回楽しめるように、フクロウも2度楽しめ
た。フクロウのこっこは4つ。やはりなるべく彼
(彼女?)らが並んだところを撮りたいのだが、
そういうチャンスは滅多にない。それでもタイミン
グによっては良い瞬間があり、しかも内地と違って
明るい林で緑もキレイだし、白樺に留まったりして
北海道ならではの良さを堪能した。時には3つ並ん
だりするが向きが揃わなかったりしてまどろっこし
い。こういう時はただただ自然な展開に任せるの
み。あまりにも良い状況に、一日中撮影に取り組む
こととなった。夜は旭川の師匠も見えて久しぶりの
再会を楽しんだ。また挨拶して回ると仕事でお世話
になっている写真家が何人もいらっしゃった。
さて、明日は4つ並ぶだろうか...

2003年6月11日 
コアカゲラ♀
今日もフクロウの様子を観察、撮影。しかしながら
状況はあまり良くなく、昨日の方が条件が良かった
のでほとんどシャッターは切らなかった。場所を
変えてシマアオジを探すも、原生花園は花には早く
枯れ野の様相だし、ノビタキは多いものの、カッコ
ウが来ていないのは他の種が未だ少ない証拠だ。
午後は移動してコアカゲラを探した。この鳥、
ほとんど見つからないので(ほとんど鳴かないし
小さいし、葉が茂っているし)ほとんど期待してい
なかったのだが道内でしか観られず、その機会は
少ないので再び観ておきたかった。実際、冬に雌を
初めて観たきりで雄を確認したかった。運良くつが
いを発見。まともな写真は雌しか撮れなかったが、
次のチャンスがある。連れの両親が帰って来ていて
久しぶりに布団で寝ることができ、熟睡した。

2003年6月12日 
コアカゲラ♂
久しぶりの布団だったので睡眠をむさぼった。起き
たのは7:30。連日の3時台の起床が嘘のようだ。天気
は上々、遅い朝に少し罪悪感を感じるが、アセらず
ともすっかり写真は撮れているのだ。今日ものんび
りとコアカ探し。本当に運が良いのか♂を撮影する
ことに成功。花が咲いていない以上、後はここでや
ることは見当たらない。連れとお母さんにフクロウ
を見せて、後はのんびりと買い物などして過ごし
た。本当に今までのガツガツした探究と違って、
今回は時間の流れが緩やか。それがいい。なぜか
アキレス腱に痛みを感じるのが不安。どこかで傷め
た覚えはないのだが、ちょっと尋常ではない鈍い
痛みを感じる。無理はできない。

2003年6月13日 
双眼鏡グッズ
野っぱら研究所さんとランチ。帯広の森のサラダ館
で玄米料理を食べた。いろいろな話をお聞きする
が、さすがにフィールドに精通したプロというもの
は別格といえる。一つ一つの話に感心することしき
り。別れた後は公園を散策。コルリがいたり、アカ
ゲラの子育てを2ケ所見つけたり、なんだかんだと
内地では難しいようなシチュエーションがそこここ
で展開しているのはさすがに北海道だ。その後、
場所を探して写真のアイテムを撮影。これが何なの
かは来月の16日あたりに判るかも知れない。いろい
ろと便利なこのアイテム、これから普及が進むこと
だろう。また再来月の16日にはいろいろな情報が
得られるかも知れない。良い道具を用いてフィール
ドに集中したいものだ。

2003年6月14日 
お散歩会の一コマ
久しぶりに我が友まさやんに再会。彼が主催する
お散歩会に参加した。参加者の方々にはいろいろな
道具を試していただいた。帯広の森の一部を散歩。
この会は厳密な同定や識別にこだわらない自由な
自然観察会で、毎週土曜日の朝に開催されている。
8時に帯広畜産大学の正門前に集合し、出発する。
まさやんの方針として、今は仲間内の観察会になっ
ているが、ゆくゆくは大勢の市民に参加してもらえ
るものにしたいということだ。お散歩会終了後は
畜大の学食でランチ。名物?の牛トロ丼を食した。
全体的に値段が安いので、旅行者にもお薦めできる
内容である。解散後はフクロウを観に行き、コアカ
の観察を続けた。コアカは雛が孵り、一安心。抱卵
中は放棄しないように騒ぐ子供達に静かにして
もらったりといろいろと気を使ったので、喜びも
ひとしおだ。夜は評判の鳥幸で一献。ここ、旨い。

2003年6月15日 
顔を出すエゾモモンガ
今日もまさやんとフィールドへ。エゾムシクイや
コルリを観察してから移動。今日もコアカの動向が
気になる。朝からイヤな曇天だったが、ほどなく
太陽が顔をのぞかせ、青空が広がった。コアカの
現場にはモモンガもいて、明るい日中にも関わらず
顔を覗かせていた。昨日はモモンガが暑そうに顔を
出しているところにコアカが戻って来て、モモンガ
はびっくりして顔を引っ込めたが、今日はモモンガ
の巣をコアカが覗いて動揺している様子が面白かっ
た。昼は駒畠の蕎麦屋『百姓庵』へ。コシのある
蕎麦と上品な野わさびを堪能した。もちろん百姓庵
の近くの純子さんにご挨拶し、南へ。シマアオジを
求めてあちらこちら回ったが、気配もない。花には
早いし、明日以降の予定が難しくなってきた。

2003年6月16日 
ナキウサギ
早朝、コアカを撮影。天気予報は晴れのち曇りだっ
たが朝からじめっとした曇天となった。まさやんが
来てコアカを撮影しているとほどなく日射しが入っ
て来た。その後、場所を移動してナキウサギの棲む
場所へ。山なので曇るかなぁとも思ったが、意外に
青空が広がり、快晴となった。標高が高いので寒い
と用意した装備では暑く、一枚脱ぐことになった。
ナキウサギたちは今日もマイペースに生きていた。
あまり出没がなかったので、結局一日中粘ること
に。満足は行かなかったが、相変わらずユニークな
行動を見せてくれた。帰りには道路端にキタキツネ
のこっこを見つけてしばし撮影。無邪気に遊ぶこっ
こたちはめんこいの一言。しかし、この後非常に
ショッキングなシーンを目の当たりにさせられた。
後日書くが、餌付けの場面(上流)から悲惨な結末
(下流)まで短時間に目撃させられるハメに。

2003年6月17日 
シマアオジ
十勝地方の天気予報は悪い傾向だったので小遠征を
することにして、まさやんとともに原生花園へ
向かった。現地ではH夫妻に再会することになっ
た。ほどなくシマアオジが目の前に現れ、草の中に
潜っていくのが見えた。他にも数人の人がいたので
今日はカメラを構えつつもじっくりと一日、その
行動を観察。巣の位置、雌雄での餌運びの交代、
水浴び、人の立ち位置による飛翔コースの変化、
絵になる花やアングル、などを考える。原生花園に
はコヨシキリ、シマセン、マキセン、ベニマシコ、
ノビタキ、オオジュリンのオールスターキャストが
いて、遠くではアリスイが見え隠れしていたり、
時折チュウヒが飛んだりと、とにかく楽しい環境。
昼からビールを呑みながらの観察は贅沢な気分を
味わえた。まさやんの発見力、識別力には相変わら
ず感心させられる。夜は道の駅で車中泊。

2003年6月18日 
シマアオジ
朝4:00に起きて現場へ。夏の朝は早い。昨日お会い
したビデオのSさんだけがおり、今朝は静かな
スタートとなった。光とシマアオジへの影響から
立ち位置を考えた。巣からかなり離れ、出入りの際
に高めのシシウドに留まってもらうよう計算。さえ
ずり同様、シマアオジはかなりおおらかな性格の
ようであまり神経質ではないが、人が少ないほど、
巣から離れるほど、良い場所に留まってくれるし、
静かにしていれば目の前に来てくれたりもする。
がむしゃらに追う人をたまに見かけるが、冷静に
観察して、頭で撮影するようにすると成果が上がる
と思う。昼に呑んだビールの酔いも醒めて良い時間
になったのでキマユツメナガセキレイを少し探して
帰路に。いずれにしても花には早い時期だったが、
じっくりといろいろな種類の観察ができたので、
大満足の遠征だった。まさやん、お疲れさま!

2003年6月19日 
ニュアナイスズメ雛
野っぱら研究所さんの木曜フィールドワークへ参加
させてもらった。帯広の森を散策し、動植物などを
観察するもの。開発によって失われた貴重な森の
内、僅かに残された部分を探究する。羽化したばか
りのコエゾハルゼミがいたり、何種類かの鳥を
観察。野っぱらさんが一つ一つ、丁寧な解説をしてくれるので、知識がなくても楽しめるが、まさやん
のお散歩会とは指向が違って、図鑑を片手にできれ
ば自分で同定できるよう努力した方が良いようだ。
解散後、近くの森へ。コアカゲラ、コムクドリ、
ニュウナイスズメが子育てをしていて、ニュウナイ
など今にも巣立ちかというほど、巣から身体をのり
出していた。夕方再び訪れてみると、目の前に鳥の
雛がいて、こちらを見ていた。ニュウナイスズメの
巣立ち雛で、さきほどの巣を見ると気配がないので
巣立ち直後のようだった。日中の帯広は暑くて気力
が湧かなかった。

2003年6月20日 台風6号から転じた温帯低気圧の影響で降雨につき休息


2003年6月21日 
クマゲラ雄
旅の最終日、まさやんのお散歩会へ参加。次に来た
時に変わっているかも知れない帯広の森の姿を目に
焼きつけながら歩を進めた。森ではコアカゲラの雌
がご挨拶。巣が近いらしく我々に出て行ってくれと
訴えていたので、退散するが、あろうことか我々を
追いかけて来た。さらにその場を離れるが、未だ
追ってくる。その距離70M以上、もう笑うしかなかっ
た。おかげでアカゲラよりも『薄い』鳴き声をじっ
くりと聴く事ができた。散策終了後、今回も長い
時間行動を共にしてくれて、充実した時間をもたら
してくれた我が友まさやんに暇乞いした。実家では
赤飯を用意してくれていて(赤飯は日持ちするの
で弁当に適している)、その他にもおかずをいくつ
も調理してくれて、東京に帰るまで飢え死にとは
無縁となるだけの食糧を持たせてくれた。いつも
ながら帯広の両親には感謝してもしきれないくらい
の世話をおかけしている。私が鳥&動物道楽できる
のも両親の存在あってのことだ。昼に帯広を出発し、
15:30に苫小牧へ。あのクマゲラの家族は今、どう
なっているのか確かめに行った。到着すると未だ
こっこはいたものの、既に2羽が巣立った後で
残る3番子が出そうで出ない状況。親も巣立ちを促す
のか餌を運ばずに遠くで見守っていた。フェリーの
時間があったので、途中でフィールドを離れた。
フェリーが港を離れ、夕日を眺めながらビールを傾
けた。次の来道に想いを馳せながら...

2003年6月22日 旅の総括
シマアオジ
昨年よりも20日早めた初夏の北の大地探究の旅。昨年
はエゾカンゾウなどは最盛期で良かったものの、他の
花は盛りを過ぎていたし、クマゲラを始め野鳥たちの
繁殖はほとんど終わってしまっていた。そこで6月の
中旬に照準を定め、スケジュールを決定したのだが、
道内は冬から寒かったせいか(5月に例外的に暑い日
が続いたことはあったが)、花が遅れ気味で予想とは
かけ離れた状況だった。しかしながら、野鳥達の繁殖
の最中に当たることになり、クマゲラやコアカゲラ、
シマアオジ、エゾフクロウなどを容易に撮影すること
ができたし、写真よりも何よりもその生命の営みを
じっくりと観察し、納得すること、面白いこと、不思
議なことなど多くの知見を得ることができた充実した
毎日だった。そして多くの人々との出会いによって、
それがもたらされた部分が大きい。現場で知り合った
人々、現場で再会した人々、知り合いの知り合いもい
れば、仕事でお世話になっている写真家もいた。そし
て友との再会が楽しかった。そして毎日、早朝から
暗くなるまで出かけっぱなしの私を世話してくれた
帯広の両親。全ての人々と自然に感謝している。

Photograph top掲示板Home