2002年12月21日 待ちに待った出発の日
RV GEAR ポータブル冷温庫
心待ちにしていた北海道撮影への出発の日がやってきた。
例年であれば冬は飛行機で渡道するのだが、撮影をいろい
ろとイメージするとどうしても頼もしいプラド+スタッドレ
スが必要と思われ、冬道リスクを覚悟で夏に続いて今回も
フェリーを選んだ。出発の日、東京は雨で、荷物積み込み
などの準備に苦労させられた上に、各地の渋滞を招いた。
おかげで外環に乗るまでに2時間近く、乗ってからも渋滞で
早くに大洗の港に行く予定が、大きく狂ってしまった。
しかも雨は一向に止まずに、運転を危険なものにしたし、
出航前1時間を切った頃、やっとフェリーターミナルに着い
て車を降りれば深い水たまりができているしですっかり
参ってしまった。やっと乗船できたが、かなり疲れた。
この日のために準備したポータブル冷温庫が役に立つ時が
来た。船内でビールを買うと高いので、予め買っておいた
ビールを冷温庫に詰め込み、船内で楽しんだ。この冷温庫
が素晴らしいのは充電池内臓で、電源がなくとも数時間は
冷温蔵しておける事。来年の夏にも活躍するだろう。
運転中にビールを呑むのはやめましょう(^^)

2002年12月22日 上陸、一路十勝帯広へ
日勝峠手前
苫小牧港に到着。緊張の冬道を走り、一路十勝帯広を目指し
た。コースは二つ。すなわち、遠回りながら凍結の心配の
少ない海岸沿いの浦河や静内を通るルート。天馬街道を通っ
ても峠の標高は低いので、安全策だ。未だ走った事がないの
でドライブの楽しみもあるが、もの凄く遠回りとなる。もう
一つはセオリー通り、日勝峠を越えるルート。最短距離では
あるが、凍結のリスクがあり、しかも勾配がきついので、
他車を含めてスリップ事故の危険性がある。帯広から電話が
来て、聞いてみると何だか峠の状態は悪くないとの事で、
思いきって峠ルートを選んだ。冬至とあって日の入りは何と
15:00台である!日が落ちると当然気温は下がり、道路が
どんどん凍結してゆく。その前に峠を越えたい。幸い、多少
の凍結はあったものの、氷が薄いので滑る事はなかった。
結局、苫小牧から3時間30分で帯広に入った。さあ、明日
から冬の十勝を堪能する探究だ。今回はどんな出会いが待っ
ているのだろうか。大変楽しみである。週間予報も良好で、
釧路でさえ、晴れマークが続いている。十勝晴れの、その
代わり冷え込む世界で私の探究が始まる...

2002年12月23日 撮影初日
ハヤブサ
早速6:00起き。日の出が遅いのが、寒い寒い冬のせめてもの
救いである。機材を担いで外に出るとマイナス14℃だった。
寒冷地仕様でない車が動くか不安もあったが、スターターが
弱々しくなりつつもエンジンはかかった。たっぷりと暖気し
ていつもの巡回コースへ向かった。国道沿いの木々は真っ白
な霧氷化粧をしていて、純白の美しさが素晴らしい。さらに
昇ってきた陽光がそれを微かに紅色に染める。美しい十勝の
風景にいつも魅了される。目的地へ着いたが、さっぱり鳥の
気配がしない。以前に何回も訪れた時にはカモやカモメが
浮かんでいて、カラスとオジロワシやオオワシが追いかけっ
子していて、時にはアザラシが昼寝している光景を観てきた
が、今日は何の気配もなし。少し移動してみたが、そんな
状況では期待の白モノを観られるはずもない。大きく移動し
てみると、崖の上にハヤブサ、オジロワシなどは確認でき
た。それでも小鳥は少なかった。その後、山へ入ってみるこ
とにして、とある林道へ。雪道に入る前にノスリとヤマセミ
を観た。いざシカ除けのゲートを開けて、林道へ。もちろん
除雪は入っていないので雪が深い。シマエナガやミヤマカケ
スなどを観察しつつ、奥地へ。奥へ行けば行く程に雪が深く
なっていき、柔らかい雪にハンドルを取られる。それでも
ランクルプラドにBSスタッドレスの組み合わせは頼もしく、
自信を深めてどこまでも行けると思い込んでいた。ところが
雪が深くなり轍が埋まっている北側の坂道で事件が起こっ
た。ついに進めなくなり、横滑りしてスタック。もがけば
もがくほど車は谷側へ流れてゆく。状況はどんどん悪化し、
ついに車は右へ傾き、左フロントが浮いてしまった。JAFしか
ない!携帯を開くと『圏外』の表示!ちょっとパニック状態
に陥った。それでも運転していた父の判断と高校時代以来の
私の押し戻しスクラムで何とか脱出。その後もああでもない
こうでもないと工夫したが、断念。あと10M越えればその後は
目的地へ着くはずだった。装備を整えても自然には勝てな
い。特に吹き溜まりは恐いという事を痛感させられた。
とある林道にて

2002年12月24日 赤い鳥
松の実を食すイスカ♂
再び6:00起き。今日もマイナス14℃だった。昨日とは違う
方面へ車を走らせ、日の出には到着。そこで水鳥など観よう
と思って歩くと、小鳥の群れが木の上の方でじっとしている
のに気付いたので、双眼鏡を覗いてみると、何やら丸っこく
て胸が赤い。双眼鏡を一瞬下ろして、はっとした。ベニバラ
ウソではないかと思ったのだ。日は昇っていなかったもの
の、順光になる方へ回ってファインダを覗くと『あれ?嘴
が交差している???』雌雄で20ほどいただろうか。その内
に近くの松の実をはしゃぎながら食べていた。イスカの群
れだった。雌は初めて観たが、なかなか可愛いものだ。その
後、エゾリスに会いに行ったが、いつものフィールドには鳥
の姿と声が非常に少なく感じられた。エゾリス君はいくつか
出てきてくれたが、あまり愛想がよろしくなかった。しばら
くフィールドを行ったり来たりしているとゴジュウカラや
ハシブトガラなどが集まってきて、にわかににぎやかになっ
てきた。チリリリリという聞き慣れない声の主を辿ると、あ
あ、レンジャクだ。尾の色を見ると、あ、黄色だ。キレン
ジャクは意外にも初めてだった。その後、いつもお会いする
自然保護委員の方が状況を教えてくれ、水鳥を中心に種類探
しをした。ミコアイサ、カワアイサ、ウミアイサ、アメリカ
ヒドリなどが入っていた。その後、別の場所にコアカゲラを
探しに行ったがフラれてしまい、雪をラッセルして歩いたの
が徒労に終わってしまった。その後、ネットでお世話になっ
ている十勝の純子さん夫妻宅を訪ね、昼食をご馳走になりな
がらの鳥談義となった。お二人とも非常に人柄の良い方で、
ここ十勝の鳥の話を交換し、有意義でとても楽しい(美味し
い)一時を過ごした。お土産にと地元の野菜まで持たせてく
れ、感謝感激の至りだった。夜は家族でささやかなクリスマ
スパーティ。プレゼント交換までしてしまった(^^)
写真は失敗、というか撮れない時間帯だった

2002年12月25日 森の賢者との出会い
昼寝中のフクロウさん
定時の6:00起き。睡眠不足ながら意外に起きやすいなと思っ
たら、気温が暖かくマイナス10℃だった。どうりで刺すよう
な感覚がないワケだ。今日は昨日と同じ場所に朝イチで行っ
てみた。昨日、イスカの群れという千載一遇のチャンスを
生かせず、写真を失敗したリベンジをしようと思ったから
だ。ところが同じ場所には彼等の影も形もなく、どうやら
通りすがりだったようだ。いつか良い写真を撮ってやると
誓いつつ、郊外の林へ。昨日フラれたコアカゲラを探しに
行った。吹き溜まりの手前に車を置いて、靴をソレルに履き
替えて雪をラッセルして歩く。これが、なかなかしんどく、
氷点下の気温でもあっという間に身体が暖まるほどに体力の
必要なもの。普段の仕事での撮影もそうだし、北海道での
撮影でも体力勝負なので、私の場合は日頃から幅広腕立て
50、足上げ腹筋30、背筋30、スクワット30、幅狭腕立て30、
下腹部腹筋40(これはビール腹対策?)、ダンベル10kg
腕左右30、肩10、それと例の転がすヤツ30、のメニューを
週に2日ほどある休肝日に(笑)取り入れて体力作りしてい
る。これで酒とタバコをやめれば最強なのだが、ストレス
対策ということにしておこう。さて、コアカゲラを求めて
森を徘徊するが、ゴジュウカラばかり。たまにキバシリを見
つけて撮影するも、コアカの影も形も声もない。彷徨う事3時
間、何やらハシブトガラとゴジュウカラが尋常ではない騒ぎ
方をしていたので、近寄っていった。そして、何気なく顔を
上げると、あれ?観た事ある顔だ?森の賢者だ!眠そうな
エゾフクロウを見つけたのだ。瞬間、疲れは吹っ飛んだ。
頑張ると良い事があるものだとあらためて思った。もちろ
ん、この林には私独り。完全独占!何という贅沢だろう。
フクロウさんが完全に寝入った後は、さらに郊外の森に出て
シマエナガの群れと戯れた。白モノの原点、内地のエナガと
は亜種とはいえ、ひと味違うめんこさにまたまた魅了されて
しまった。今日の出会いで再び気力が蘇った。明日は再び
目標の白モノを探そう。そして、また予想外の出会いを期待
しよう。夜は地元の学芸員の方と一献、楽しい一時だった。
めんこいねーシマエナガ

2002年12月26日 広尾方面へ
オオワシ
定時の6:00起き。もはや仕事に出かけるような感覚である。
休みなのに休みとは思えない毎日。ただしストレスがなく、
楽しいのが本業とは違う部分。今日は起きるのがつらいなぁ
と思ったら、-20℃まで下がったのだった。3日目で初日の
状況が変わっていないかといつもの巡回コースを走った。
状況はあまり変わらず、相変わらず鳥の気配がない。やっと
の事でミサゴやオオワシ若などを見つけた。だいいちカモが
少ない。その後、広尾方面へ。ひと通りポイントを回ること
にした。小鳥が少ないのは同じ状況。それでも、オオワシや
オジロワシは確実に観られた。しかしながら、その数は例年
より少ないようだ。昼には有名な石坂の赤門というラーメン
屋に入った。なかなか美味しいラーメンを味わった。それか
ら、いろいろと寄り道をして帰ってきたが、一日を通して
収穫が少なかった。それでも、新しい道を見つけたりして、
それなりに次につながるロケハンとなった。明日はすごい
寒波が入るらしく、大陸からの飛来に期待したい。

2002年12月27日 赤い鳥祭り
イスカ群れ
6:00起き。今朝は目覚めが良いと思ったらやはり気温が高め
でマイナス10℃程度で収まっていた。先日の悔しさを忘れ切
れずポイントへ行ってみた。セブンイレブンで買ったサンド
ウィッチを朝食に食べていると小鳥の群れが見えた。早速、
双眼鏡を覗いてみると、あ!赤い鳥!もう夢中で(もちろん
そっと)追った。先日、写真を失敗したイスカの群、同じ
失敗を繰り返すワケに行かない。前回、光量不足が失敗の主
原因だったので、しっかり日が昇るのを待ち、順光を心がけ
て彼等に近付いた。飛び立った所を数えると♂♀18。面白い
のは個体差があり、同じ♂でも真っ赤なヤツがリーダー格で
1羽いて、他は色合いが薄い。成鳥と幼鳥の違いなのだろう
か。雌も黄色ぽいやつもいれば、クロジのようにグレイぽい
やつもいて、十鳥十色。食事に夢中のようで、じっとしてい
るとレンズの最短距離を割り込むほど近くまで来る事もあ
り、こちらがこり固まってしまう。年始のT霊園の出現騒ぎ
がバカバカしいほどだ。一生分撮った!と思ったが、写真を
見てみると、ああすれば良かった、が多く、奥が深いなぁと
思った。

2002年12月28日 エゾモモンガとの出会い
モモンガさん
6:30起き。昨晩の酒が多かったようだ。まず朝日をバックに
白鳥でも撮ろうと出かけた。気温は低く、18℃だった。しか
しポイントへ着く頃には太陽がすっかり昇り切っていて、
完全な遅刻となってしまった。休みのせいか、先客も多く、
すっかりやる気を失って、郊外の森へ移動。現場は23℃だっ
た。早速、先日出会った賢者さまを探したが見つからず。鳥
の数も極端に少ない。『寒さが厳しすぎるからだろうか』
あれこれ考えて、次の撮影地をどこにしようか考えながら
歩いていると、ふと見上げたらさりげなくモモンガがいた。
ありゃ、珍しい!そう、モモンガ君は夜行性なので明るい
時間にはなかなか観られず、夕方や早朝に観られる事がある
ものの、日が昇りきった時間に観られるのは珍しいのだ。
滅多にないチャンスに鳥肌を立てつつ撮影させてもらった。
基本的に野鳥や動物にストロボなど焚きたくないので、好都
合である。私の考えでは、彼は夜遊びが過ぎて明るくなって
しまったもので、すぐに朝帰りする(巣に戻る)とみた。
しかしながら、彼はじっとしたまま、あまり動かないので
不思議に思いつつも写真を撮らせていただいた。あまり人を
恐れないようで、かなり近付く事もできた。その内に木を登
り始めたと思ったら、ひゅーっと滑空して他の木に移った。
穴に入ったり出たりしながら、断続的に滑空を繰り返した。
今までは暗くなった時間に狭い範囲を飛び移っているシル
エットを観た事があっただけだったが、なにしろ明るい時間
なので、開けた林で広げた白いハンカチが飛んで行くような
ユニークな姿をはっきり観る事ができ、感動した。滑空を
繰り返し、巣と思われる穴に入ったので『お休みになるのだ
な』と思ったら再び出てきて、近くの木に飛び移った。それ
からどんどん木を登りはじめ、滑空を撮ろうと待っている
と、いつまでも飛ばずにどんどん木の上の方に登って行く。
その内に歩みが遅くなってきて、ネコが獲物を狙う時のよう
な怪しいノロノロ歩きに変わった。ホフク前進のような怪し
い行動に見えた。そして最も高い所まで登りつめると木の実
や芽を食べ始めた。なるほど、枝が細くなるので慎重にバラ
ンスを取りながら進んでいたのだ。その後、空腹なのか木の
高いところで1時間以上食事を続けていた。写真は撮れないの
で、じっくり観察した。なんと正午まで食事は続いたので、
『彼、まさか今日は徹夜(徹日?)なのでは...』などと
こちらも昼食抜きで頑張ろうと決意したら、急に飛んで巣に
入ってしまった。あれ?何か脅かしたかな?と考えていたら
上空をノスリが飛んでゆくのが見えた。なるほどと感心しな
がら今日の撮影を切り上げた。久しぶりに雪が降ってきた。
めんこいモモちゃん

2002年12月29日 クマタカとの出会い
毛並みの良いキツネさん
6:00起き。だいぶん体力が弱っているらしく、少し風邪気味
だが、十勝晴れが続く以上、ゆっくりと朝寝しているわけには
いかない。今日はまさ@帯広さんと共に出かけた。白モノ期待
のポイントを再び巡回してみた。寒波に乗って来るものが来て
いると勝手に希望的観測を抱いていたが、見事に空振り。自然
のことなので断言はできないが、今シーズンはダメだと思う。
それでもメゲずに、まささんといろいろな話をしながら小鳥か
ら猛禽、4つ足まで目を皿のようにしながら車をゆっくりと走
らせた。お食事中のハヤブサやオオワシ、オジロワシなどを
観察しながら行き先を考え、前回スタックした林道を走る事に
決めた。ただし、遭難しないために走るのは山を挟んで反対側
の道にしておいた。途中、立派な角のエゾシカや毛並みの良い
キタキツネなどを確認。お目当てとは違うとはいえ、北海道ら
しい出演者に少しほっとさせられた。朝から全開で何も食べて
いなかったので、コンビニでおにぎりを買い込み、いざ山へ。
カラ類、キバシリ、エナガなど小鳥はそれなりに多いようだ。
道中、かなり至近距離のオオワシを見つけたので撮影を算段
していた所、右前方から大型の猛禽がふわっと飛んでくるのが
見えて、オオワシがもう1羽来たのかと思ったが、双眼鏡を覗
いてみるとタカ系の模様をしている。オオタカにしては巨大。
まささんが『クマタカだ!』と声を上げて、それと判った。
勇壮な姿に胸が高鳴った。止まっていたオオワシ2羽が飛び上
がったので応戦の構えかと思ったが、結局戦わずしてクマタカ
に追い払われることになった。とりあえず飛翔を撮影しようと
思ったが、二人ともあたふたしている内にどんどん遠くに飛ん
で行ってしまい撮れなかった(撮ったハズがエラー2が出て
た、なんで重要な時にエラーなの!)。その後林道を一周し、
日も傾いてきたのでゆっくりと車を走らせながら再びクマちゃ
んを探した。そして、初めに目撃した尾根付近を通りかかった
時、再び上空を舞う大きなタカの姿が!今度は何とか記念撮影
ができた。終わってみれば充実した1日。まささんをミスター
クマタカと認定し?くままさ@帯広と改名するよう要望を提出
?しようかと思う。地元に同じ趣味をもつ同年代の知り合いが
でき、とても嬉しい日となった。
勇壮なクマタカ

2002年12月30日 市内を歩き回って
エゾリスくん
6:00起き。定まったポイントを回る。あの素晴らしい出会い
の森は静かで、2時間ほど雪道を歩き回ったものの、新たな
出会いはなかった。新しいポイントを求めてまささんに連
絡、新たなポイントを求めて市内中歩き回った。折からの風
が強く、各地で寒々しい地吹雪となり、4つ足も鳥さんも期待
できない状況だったが、ロケハンということでいろいろな話
をしながら車を走らせた。昼食は大正の『らむ亭』が年末な
がら営業していたのでジンギスカンとサガリを食べた。それ
ぞれ1000円前後でお腹いっぱいのボリューム。ジンギスカン
はクセがなく絶品。この食の楽しみがあるから十勝での撮影
は楽しい。食後は周辺の森でシマエナガと戯れ、あの森に
モモンガを探しに行ったが、新しいフィールドサインを見つ
けたものの、登場はしてくれなかった。まささんからの提案
で明日の約束をした。期間限定(年約1ヶ月)十勝動物写真
若手コンビが結成された。

2002年12月31日 年の締めくくりは、クマちゃん大作戦!
貫禄のクマタカさん
6:00起き。まささんと待ち合わせて山へ向かった。狙いはもち
ろんクマちゃんことクマタカ。一日かけてクマちゃんを狙う
プロジェクトである。早朝の十勝平野は日高山脈がピンク色に
染まり、見事な十勝晴れとなった。ところが山の足元には雪雲
がかかり、天候が不安だった。現地入りし、上空に現れるクマ
ちゃんを待った。遠くから観た通りやはり雪となった。今日も
風が強く、マイナス12℃の風が頬を刺す。車を停め、車外に
三脚を据え付けてクマちゃんの出現を待った。雪靴を履いてい
てもしんしんと寒さが伝わってきて、思わず車内に逃げ込む
と、寒空に据え付けた機材のストラップが風に大きく揺れてい
て、寒がっているようにさえ見えた。少し外にいては車内に
逃げ込む、を繰り返すとオオワシやオジロワシが上空を舞う。
クマちゃんを迎え撃つ事前訓練とばかり、それらをファイン
ダーで追って撮影した。だいぶん待ったが、肝心のクマちゃん
は未だ現れない。『クマゲラ!』まささんの声で飛んでゆく
黒い鳥を双眼鏡で覗いた。キョーン!という鳴き声は聞こえな
かったが、谷を越え遠く向いの尾根に飛んでゆく様はたくまし
さを感じさせた。3時間待ったが、一向にクマちゃんが舞わない
ので例によって、ああでもない、こうでもないと原因分析する
がそんな事が推察に過ぎないことは良く解っている。『流しま
すか』まささんの策を受け入れ、ゆっくりと車を走らす。鳥を
探すために車を10km前後で走らせた。幸い、冬の山奥というこ
ともあって、通る車は数えるほどだったので、後ろを気にする
事なく鳥探しに専念できた。トンネルの手前でまささんが何か
を見つけたようだ。車をバックさせると山の斜面にカラスくら
いに見える鳥が止まっているのが見えた。逆光で黒く見えた
それがクマちゃんだった。少し遠いがクマタカの警戒心を考え
れば、好条件と思えた。サンルーフを開け、いざと思った瞬間
に彼はあっけなく飛び去ってしまった。そして、尾根の向こう
へと高く飛んでゆき、姿を消してしまった。『千載一遇の機会
を逃した!』悔しさで一杯であったが、後の祭り。次の出会い
を期待してノロノロと車を走らせた。奥地まで探索したが、
上空を舞っているのさえ確認できなかった。仕方なく最初に
待っていたポイントまで戻り、昼食。今日はセブンイレブンで
買ってきた豚丼。ひところは全国展開の話もあったが、いつの
間にか立ち消えになって、今は地元のこちらでしか売っていな
いものだ。味は...まあコンビニ物だから(^^;『ぱんちょ
う』と同じ物を期待する事自体が間違っている。食べ終わって
もクマちゃんは舞わない。『探すべ』再び車をノロノロ走らせ
て目を皿のようにして次々に続く山の斜面や稜線をチェックし
た。『いない...』13:00を回ると夕暮れを意識し始めるのが
この時期の鳥観。諦めて帰る事にした。車速は少し上げたが、
一応ゆっくりと流しつつ帰路へ。少し山を下りたところでまさ
さんが何かが停まっているのを見つけた。『クマタカだ!』
一気に緊張が高まる。そして、彼は我々の前でじっくりとその
ふるまいを見せてくれた。今一つながらも貴重な写真も得ら
れ、年の最後の日の鳥観としては最高の成果を味わう事ができ
た。さすがは『くままさ』さん。彼と一緒にいるとクマちゃん
が姿を見せてくれるようだ。素晴らしき大晦日となった...
勇壮なクマタカ
飛び立つクマさん

2003年1月2日 根室遠征
琵琶瀬展望台からの霧多布湿原
3:30起きで一路根室へ。帯広から200km以上を一気に移動する
。明るくなった頃に国道を外れ、海岸線沿いをゆっくりと走
る。シロハヤブサが観られるかも知れないからだ。結局ノス
リがいたくらいで、大した出物はなく現地に到着。既に現地
入りしていた我が師に連絡し合流した。師は元旦の夕暮れに
結氷した湖面に3,000頭ものエゾシカが集まっているという
日本離れした光景を写したそうで、さすがだと感心した。そ
の被写体には40本のフィルムを費やしたそうだ。久しぶりで
熱くなる撮影だったという。合流後、クマゲラを待ったが一
向に現れず、2時間で断念。昼食をとるが食欲がない。だんだ
んだるくなってきて、どうやら風邪にやられたようだ。車を
運転するのさえ苦痛で、もはや撮影どころではなかった。
今日は風が強くて鹿の集まりも悪く、絵にならなかった。夜
は民宿風蓮に逗留。正月でどの店もやっていないので、風邪
薬を根室市内まで買いに行くハメになった。夕食も喉を通ら
ず残してしまい、宿の主人に申し訳なかった。熱が上がって
きたようで、鳥談義もそこそこに休む事となった。

2003年1月3日 遠征中止
エゾシカは多い
5:00起き。日の出前に鹿のポイントへ移動。風が止んでいたの
で夜明けのエゾシカの大移動を撮影できるかと思ったが、大し
た数は出てきていなかった。それでも道路を渡る鹿が多く、車
を運転していてちょっと恐かった(衝突すれば鹿の命を奪う
だけでなく、車も大破するし、スピードによっては自分の命に
も関わる)。エゾシカに見切りをつけ、尾岱沼から野付へ。
尾岱沼ではたくさん白鳥が入っていたが、氷が割られていない
ので氷上で雪大福のように丸まっていて可哀想に見えた。野付
半島ではハギマシコの群れに出会ったりした。その後、師匠は
別件があるとの事で、ここで解散となった。私は今回の北海道
への撮影に仲間から宿題として出されているユキホオジロを
探すべく風蓮湖へ。突端まで行ってみると早速、遠くに群れて
いる姿が観られた。ただ、最低限の撮影距離に近付こうとする
と飛んでしまう。車を歩くよりも遅く進めても、一定の距離に
なると飛んでしまうのだ。仕方がないので、ヤマを張って車を
停めて待ったが、ついには遠くに飛んで行ってしまった。その
後、数時間待ったが、次々に現れる車と人を嫌ってか、彼等は
戻ってきてくれなかった。待っている途中で見つけたハヤブサ
が少し変わっていた。ファインダーを覗いてみてハッとしたの
だが、嘴と虹彩が非常に鮮やかな青なのだ。考えてみれば大き
さも少し大きかったような気がするし、白い部分も鮮烈な白な
のだ。もしかしてシロハヤブサ?と思ったが、ちょっと黒い部
分が多すぎるようだ。お仲間の見立てではハヤブサ幼鳥との
見解。確かに縦班を考えれば幼鳥には違いないだろうが、前述
の理由から疑問が残る。シロハヤブサも単に淡色、中間、暗色
の3タイプだけではなく、普通のハヤブサとほとんど変わらない
ものなどいろいろな種類があるという情報をネットで見つけ
た。ただ、シロであっても淡色でなければしようがないので、
どちらでも良い事である。ユキホオジロのために車で寝て再挑
戦しようと思ったが、天気予報を見ると道東も大雪になるとの
事で、風も強そうなので遠征をここで終了することにして、
一路十勝帯広へ戻った。宿題を片付けることはできなかったが
今回の経験を生かして、必ず次シーズンにはものにしたい。
ハヤブサ

2003年1月4日 大雪の日
すっかり埋もれてしまったプラド
天気予報の通り、帯広に大雪が降った。あまり知らない人は
北海道といえば冬は雪と考えがちだが、道東は雪が少ない。
本州と同じで札幌や旭川、言ってみれば日本海側は雪が多く、
帯広や釧路、根室などは雪が少なく晴れる日が多い。その境は
日高山脈であり大雪山系となる。その帯広に50cm以上の雪が
降ってしまったのだから、さあ大変。写真の通り我がプラドも
雪に埋まってしまった。正午過ぎに雪が止んだのを見ていざ
出陣!雪掻きを開始。実家駐車場周り、プラドの駐車場を1時
間ほどかけてみっちり雪掻き。駐車場をラッセルするとの事
だったので、プラドの方はだいたい道をつけたら4駆をローに
入れて強引に脱出!一時退避させた。気温もプラス5℃までも
上がったので、汗をびっしょりかいて一運動した感じ。空も
いつもより、さらに青く高く、春のような日和が爽やかだっ
た。大雪で困ったのか雪掻き中に頭上の電柱にアカゲラが来た
り、シメやレンジャクなど家の周りではふだん観られない鳥
たちが必死になっている様子に思わず微笑んだ。

2003年1月5日 2色レンジャク
キレンジャクカメラ目線トビモノ
5:45起き。マイナス10℃と真冬の寒さは一段落したようだ。
降雪により鳥たちが移動していると見て市内を中心に各ポイン
トを巡回してみたが、どこも腰までの雪に埋もれていてとても
ではないがバードウォッチングどころではない。除雪は主要な
道路までがやっとで、公園内、施設内などはほとんど埋もれて
いるというわけだ。主要道路の除雪もズサンなもので、雪の少
ない帯広にいざ大雪が降って(しかも正月休み中)対応が追い
つかない様子がアリアリだ。仕方がないので各ポイントを敷地
外からチェックするが、そんな状態で良い成果が得られるはず
もない。うーむ、どこへ行けば...と悩んでいるとチリリリ
と上空を飛んで行く一団が。レンジャクの群れだ。彼等の飛ん
で行った方を探索すると...赤い実が見えた!お、これだ!
案の定、しばらく待っていると数羽がやって来て素早く実を
ついばみ、去ってゆく。双眼鏡覗くと、あ、ほとんど黄色だ!
内地と逆でほとんどがキレンジャクでそれにヒレンジャクが
混ざっている状況だ。数時間粘ってみたが、周辺は雪掻きの人
や除雪作業で騒々しく、臆病なレンジャク達は物音がすると
寄り付かなくなるし、ヒヨドリが邪魔するし、やっと来ても
数秒でいなくなるし、で写真は難しかった。

2003年1月6日 風を恨む
キレンジャク
6:00起き。マイナス7℃でかなり暖かく感じた。しかし十勝晴れ
の快晴ながら風が強く、不安を感じさせた。というのも風が
あると小鳥も4つ足も出が悪くなるし(一般論では猛禽など天敵
の襲来を察知しにくくなるのを嫌うとか)、出ても写真がブレ
るし、体感気温がぐっと下がって冷えるし、で良い事がないの
だ。昨日のレンジャクの木に再び行ってみたが、風で枝が揺れ
に揺れ、写真が難しい上にレンジャクの数も飛来の機会も極端
に少なかった。そして、1時間も粘っていると足元から冷えてき
て、思考能力の低下を意識する程になってきた。トイレに行き
たくなったのをきっかけに撮影を諦め、移動することにした。
各地の積雪は当然そのままなので、特にアテもなく広範囲を
ドライブすることになった。ミヤマホオジロやノスリなどは
見つけたが他に発見もなく、寒々しい地吹雪をくぐりつつ車を
進めた。もう帰ろう、諦めかけた時に孤独なキレンジャクを
発見。しかも、意外な場所に独りでいた。降雪で実のある所に
来た結果がここだったということか。何枚か撮影して本日の
撮影を切り上げた。明日の夜は苫小牧からフェリーに乗り東京へ
帰らなければならない。事実上、最後の撮影日だったが積雪と風
に泣かされる結果となった。

2003年1月7日 帰路へ
エゾリス
6:00起き。-15℃。今日は十勝帯広を離れ、苫小牧からフェリー
に乗って帰路へ向かう最終日。最後の悪あがきで早起きして
被写体を求めた。昨日の風は止み、おだやかではあったが、
依然として積雪に阻まれ、歩ける場所は少ない。まずは、あの
イスカの群れが来ていたポイントへ。ナキイスカを探そう!の
思惑とは裏腹に残念ながら何者も見当たらず。彼等が群がって
いた木も降雪で埋もれてしまっている。それでは山にクマタカ
を探そう!で車を走らせると降雪で通行止め。仕方がないので
リスでも撮ろうと部分的に除雪が入っている公園へ。数匹の
リスが走り回っていたが、こちらのやる気のなさが被写体に
伝わっているらしく、リスさん達はあまりいい歓迎をしてくれ
なかった。適当にシャッターを切っていると、チリリリチリリ
とレンジャクの声が。上空を見上げると20以上の群れが飛んで
ゆくのが見えた。双眼鏡で飛んでゆく先を追ったが、木立に阻
まれて見失った。群れの後をジュリンという声が飛んで行った
ので興味が湧いて来て、赤い実の木を探す事に。彼等が飛んで
行ったと思われる方向、街中をゆっくりと走り、キョロキョ
ロ。赤い実のついた、食べカスが落ちている木をいくつか見つ
けるもレンジャク見当たらず。ツグミやヒヨドリも食べに来る
のでポイントが絞りにくい。その内に10:00を回ってしまったの
で家に戻った。荷物をまとめ、赤飯むすびの弁当を持たせても
らい、17日間もの長滞在でお世話になった両親に暇乞いして
十勝帯広を離れた。帰路は行きとは違う道を選び、豊似から
天馬街道で日高山脈を越え、浦河へ出た。日勝峠越えに比べて
かなりの遠回りとなるが、その分、道は緩やかで雪が少ないの
で安全に苫小牧へ行ける。また、幾度となく北海道へ来ている
私も初めて通る道でもあり、サラブレッドで有名な地域を眺め
つつのドライブが楽しみだった。なぜか服を着せられた馬を眺
めながら海岸線を走り、静内に入った頃にコミミズクが飛んで
いるのを見つけた。日没前の北海道最終日最後の出会い。写真
が撮れる距離には来てくれなかったが、とても嬉しかった。
これだから北海道を走り回るのは止められないのだ。無事に
苫小牧に着き、フェリーに乗船した私の頭には既に次回の計画
がある。既に私の北海道撮影行はライフワークだからだ。今後
は写真が撮れれば万々歳ではなく、環境保全や自然保護の面で
も活動してゆきたい。探していた志がここにある気がする。
コミミズク

Photograph top掲示板Home