2004年6月14日 旅立ち
大洗港にて
ライフワークとなった北海道への撮影行は夏の陣。既に自ら
の日常と化した感があり淡々とした気持ちで旅立ちの日を迎
えた。今回は友人2名と共に道内のポイントを回る予定だっ
たが、思いがけず親族の結婚式が日程に重なり、先行の友人
とは同行できず、だいぶん後で合流する予定に変更した。
なぜか連れ合いも15日に演劇鑑賞の予定を入れており、これ
また後日合流ということになって、単独大洗へ。自宅から2
時間ほどで早く到着したので水戸の友人に連絡したら、なん
と港まで来てくれて、少しの間だが久しぶりに再会を楽しん
だ。友に暇乞いし、いよいよ乗船。ルーフの船の高さでまた
また最後に案内されると思いきや、最初の方に載せられた。
どうも最初か、最後かが駐車場に並ぶ時間で変わるようだ。
男独りなので節約して2等寝台にしたが、プライバシーはない
し、暇だし、の船旅となった。さあ、明日の午後は上陸。
今回は日程が若干短いので忙しいスケジュールとなってい
る。人、動物、どんな出会いが待っているのだろう...
上背高い車は早く並ぶと先に載せられるようだ。

2004年6月15日 苫小牧上陸
クマゲラ
苫小牧に上陸し、昨年も観察したクマゲラを観に行った。噂
通り、今年は野鳥の繁殖時期が例年よりも遅く、前シーズン
は既に雛が顔を見せていた時期なのに、今回は親鳥が餌を与
えるのに巣穴にすっぽり入る現状だったので、これは雛がか
なり小さい=遅れていることを意味するということだ。とり
あえず少しだけ撮影し、前シーズン、そして冬にもお世話に
なったYさんにご挨拶して引き上げた。このような場所で
集まった人と共に三脚を並べて長時間撮影するのは面白くな
いし、好きではない。やはり自ら見つけて、じっくりと観察
し、自分独りで撮影するエクスクルーシブな状況が理想と思
う。情報を頼みにあちこち走り回るのはイージーだが、いつ
もそういう鳥観スタイルではいつまで経っても調査力も観察
力も身につかない上に、皆と同じような写真を量産すること
になってしまう。第一、広大で人口密度の低い北海道に来て
いるのに、なんで地元の珍鳥集会のような状況に身を置かな
ければならないのだろう。少し走り、以前からお会いした
かったSさんについにお会いすることができた。Sさん特製
の野営鍋をご馳走になり、一献傾けながら談笑した。
飛翔撮影は難しいし、ゲームじゃないし、いいや

2004年6月16日 炎の鳥
アカショウビン
3:30起床。既に外は白み始めている。夏の北海道の朝は早い
のだ。ちょっと起きるのがしんどい早さだが、その代わりに
一日に撮影できる時間が長いのが嬉しい。夜も19:00までは明
るく、20:00でも残照が残っているほどだ。手早く着替え、S
さんと共にフィールドへ。多くの鳥たちのコーラスの中、遠
くからアカショウビンの声も聴こえた。『観たい!』の一心
で本日のお題はこの炎の鳥と決まった。声のする方に徐々に
近づいてゆき、姿を探すが、すぐ近くでさえずっているのは
確かなのに姿が見つからなかった。まあ、こんなものでしょ
うと少し歩いた時にはるか遠くに赤い何かを見つけた。それ
が炎の鳥だった。しばらく横枝にとまっていたが、その後水
面に飛び込んだかと思うと、遠くへ飛んで行ってしまった。
うーむ、もう少し間近で観たい...そう思って一日頑張っ
て探したが、声も遠いし、とうとう姿も見えないしで諦め
た。最初に姿を見られたのが運が良かっただけなのだった。
やはりこの鳥は難しい。Sさんに暇乞いし、次の目的地へ。
こんな出会いにも北海道の懐の深さを感じる

2004年6月17日 夏鳥が少ない?
トラフズク成鳥
3:30起床。良い天気が続いている。すぐに情報をもらったトラ
フズクを見に行ったが、既に幼鳥は巣立って大きく成長してし
まっているし、親子がバラバラだし、やはり人が集まっている
し、で眠っている親鳥を一枚パチリとやって、すぐに移動し
た。今日の夜はついに東京の友人達との合流。明日の撮影に備
えて十勝の各ポイントを下見しておくことにした。9:00頃に
帯広入りしいくつかのフィールドを調査。しかし、エゾフクロ
ウ、コアカゲラ、いずれも出発前の楽観を反省しなければなら
ない厳しい状況で、友をどこに案内するか見当もつかない。
まあ、後はぶっつけ本番で探そうと開き直るしかない。少し涼
しくなってきた頃に友人たちと合流。宿にチェックインしても
らった後は帯広駅近くの平和園でサガリやジンギスカンを食べ
ながら一献。Hさんのお仲間、Nさんは初対面だったが非常に
折り目正しく好感の持てる人物だった。先行の彼らは物凄い距
離を移動し、道内各地で撮影、Hさんなど2,500枚ほど撮影済
みだそうで、未だ100枚ちょっとしか撮影していない身として
は羨ましい話をいろいろと聞かされた。自分としては十勝
フィールドの案内役に徹するのみなので彼らの今までを上回る
ような成果を提供できるか緊張した。十勝ビールでもう一献
やって解散。彼らの疲れもあり明日は5:00集合に決定。
写真撮っていないなあ、今回の北海道...

2004年6月18日 十勝オフ実現!
アカゲラの子育て
4:30に起き、5:00に友人二人を迎えに行った。すぐに私の
フィールド『出会いの森』へ。あてもなく、出会いを求めて
歩いた。多くの鳥たちのさえずりを聞きながら朝の森を歩く
と、やたら気になるエゾセンニュウのうるさい個体がいた。
すぐ目の前から聴こえてくるものの、姿を見つけることが
できない。しかし、本当にすぐ目の前にいるのだ。そもそも
私はエゾセンの姿を拝んだことがない、友人二人はもちろん
だった。そこで、何とか姿を拝んで撮影してやろうと1時間ほ
ど粘ってみた。何度かチャンスはあったが、何しろ姿を見せ
てくれるのが1秒以下。証拠だけ何とか、で次の撮影地へ。
ここでは少し歩けばアカゲラの巣が5〜6ケ所見つかったもの
だが、今年見つけられた巣は3ケ所に過ぎなかった。やはり噂
通り夏鳥の繁殖は遅く、数は少ないのだろうか?それでも、
エゾムシクイは撮影しやすかったし、その他にもいろいろと
観察ができたので良かった。繁殖の時期の撮影には観察力と
想像力が不可欠だ。どの鳥も人間が巣に近づけばこちらを威
嚇、牽制してくる。種類によって声の大小もあるが、概して
こちらの周囲を親鳥が飛び回り、警戒鳴きする。餌をくわえ
たまま同じ所を飛び回るのは正にそれである。アカゲラはう
るさいので判りやすい。こういう状況を招いたら、彼らの繁
殖を邪魔しないよう速やかに立ち去るようにしたい。こうい
う基本知識さえ持ち合わせないカメラマンが意外に多く、繁
殖放棄を招くことは珍しくない。常に対象への影響を想像
し、危機管理できない限り写真を撮る資格はないといえる。
午後は野営場所を決めるべくあちこちを走り回った。その甲
斐あってか友人たち念願のコアカゲラを見つけた。雛はかな
り大きく育っており、たまに顔を覗かせていた。連絡した友
人が駆けつけ、いざ撮影と思ったら不思議な行動が起こっ
た。これだけ雛が大きく育っているのに交尾をしたのだ。そ
して、それまで10〜15分間隔で餌を運んでいたのが巣に戻ら
なくなってしまった。(交尾は次のやり直しを意味している
のでは...)『まさか、放棄...』私は蒼くなり、撮影
している皆に声をかけ、その場から引くことにした。遠くか
ら様子を見るが、戻る気配はない。『雛がこれだけ育ってい
るし、放棄はないのでは』友が言う。確かに観察者を気にし
た警戒行動などは皆無ではあった。『ではこの段階での交尾
はどう説明する?』30分ほどが過ぎただろうか、雌が戻って
来て餌を与えた!良かった!思わず合掌した。その後は順調
に育雛が再開したが、少し離れて撮影することにした。
夜は清水町の温泉フロイデのコテージを利用したが、これが
とても立派で良かった。そして、浦河から我が友も駆けつけ
てくれて合流、十勝オフを実現することができた!とても嬉
しくて、ぐいぐい呑んでいる内に眠ってしまった。
コアカゲラ
継続観察すると面白い知見が出て来るだろう
2004年6月19日 おべりべりのお散歩会
ベニマシコ
5:00起き。東京の友人達は本日の船で帰京するので最終日。
今日はのんびりモードで、おべりべりのお散歩会に参加して
もらうことになった。こちらの友人達、懐かしい面々に再会
し、共にフィールドを歩いた。特筆するものはなかったが、
カメラを持たず、双眼鏡だけで純粋にフィールドを愉しむの
も心地よいものだ。歩き終わると良い時間になり、東京の友
人達は苫小牧へ向けて出発した。彼らは今回の旅に相当に満
足していたようだが、私としては大した事をしていないし、
エゾフクロウが心残りである。まあ、1回で何でもかんでもと
いうのも欲張りな話で、また次回の楽しみにしてもらおう。
午後はおべりべりの面々と共に清水町へ。まずは評判の蕎麦
『目分料』で昼食。その後、フィールドを下見。下見という
のもおべりべりは清水町から親子自然観察会で講師を依頼さ
れたのだった。フィールドは...お、ベニマシコ見やす
い!オオルリ見えた!植物も盛りを過ぎているものの興味深
い種がある、など予習がしっかりできた。後は明日の天気が
心配なところ。夜は恒例となった鳥幸での飲み会で楽しん
だ。十勝に来ると多くの友が集まってくれるのが嬉しい。
やっぱり夏羽はキレイだなぁ

2004年6月20日 観てもらう、楽しんでもらう、愉しみ
ハイタカ
4:00起き、観察会前に少しフィールドを回った。ハイタカに
出会い、面白い場面も観る事ができた。早起き一文を実感。
その後、清水町へ移動し、いよいよ観察会本番。開始時間近
くになると児童父兄合わせて15名ほどの参加者が集まった。
私は満を持してスワロフスキーSTS80HDを投入、この秀逸な
逸品、こういう時くらいしか使わないような気がする...
名機は集まった子供に触られまくり、逆から覗かれたり、い
たずらの対象になってしまい、早くも指紋や鼻の脂べった
りになった。ははは、かわいいものじゃないか(-_-#)
双眼鏡の使い方を解説した後、出発。講師など初めてで上手
く話をできないが、浦河の友が大きな声で解説をし、とても
上手く進行してくれるので、補助的な役割に徹する事ができ
た。先頭を歩き、鳥を探す私に一人の子がついてきた。元気なのは良いが『待ってよおじさん』『これ見ておじさん』
とおじさんを連呼され複雑な心境に。一応、未だ三十路前半
だし周囲からは童顔で通っているのだが...小学校低学年
の子供からみれば...おじさんか。ははは、かわいいもの
じゃないか(-_-#)さて、肝心のフィールディングは29種見ら
れ、特にオオルリはじっくりと観られたし、近くに来てくれ
るサービスもあり、美しい瑠璃色が参加者に感銘を与えたよ
うだった。それにしても、初めての鳥見でオオルリをスワロ
フスキーで観るなんて、なんて贅沢な子供だろう(^_^#)
他にもベニマシコが期待通り出てくれたし、野鳥の面ではま
ずまず大成功と言えよう。子供達は野鳥よりも、昆虫の方に
興味が強いようだったが、父兄は身の回りでいろいろな野鳥
が観られることを知り、関心をもったようだった。フィール
ドを一周してお弁当を食べ、今日観られた野鳥の解説をし、
鳥に関する質問にお答えした。終了後、町の担当のTさんに
ソフトクリームをご馳走になり、おべりべりの友たちと別
れ、解散となった。こちらの友人に良い経験をさせてもらっ
たことに感謝。解散後、帯広の両親と合流、トマムへ向かっ
た。トマムでは特筆するものはなかったが、クマゲラの巣穴
らしきものや採餌痕も見られた。
観察会の一風景
楽しんでもらう事も愉しみ

2004年6月21日 待望の出会い
エゾフクロウ巣立ち雛
3:30起床でトマムを離れた。2時間半ほど走り、エゾフクロウ
が巣立ったという森へ。実はヤマゲラが本命だし、例によって
人が集まっているしで、あまり気乗りしなかったが、到着する
と3羽の兄弟が並んでいたので、少しだけ撮影させてもらっ
た。その後、ヤマゲラの巣を見つけたが、未だ抱卵中なので、
かなり距離を置いて、隠れるようにして待つ。一度、雌に牽制
された時はすぐに離れるようにした。抱卵交代の間隔はおよそ
1時間30分〜2時間ほど。待っている間、いろいろなことに考え
を巡らす。繁殖の邪魔になってはいないか?明日は船に乗らな
ければならないが、接近中の台風はどうだろう?そんな時に雌
が巣穴から顔を覗かせた。すぐに引っ込んだが、雄が近くに
戻って来ると、巣を飛び出して行った。そして交代で雄が巣に
入った。これだけ北海道に来ていてヤマゲラを観るのは初めて
だったので感慨深いものがあった。その後、雌との交代を写真
に収める事ができたが、その後雄が戻らず、雌が単独出巣して
しまったので、これは良くないと思い、待っていた3人全員が
巣から大きく離れ機材も片付けた。私は時間切れだったので、
帯広へ向かった。夜は恒例となった義父特製の握り寿司がふる
まわれ、最終日の夜を楽しませてもらった。台風情報を気にし
つつ、明日は確実に雨なので少し眠っていられると思いながら
就寝。翌朝、7:00頃まで眠っていればいいものの、既に早起き
が習慣になってしまったようで5時台に起きてしまった。すぐ
に台風情報をチェックすると既に温帯低気圧に変わったという
ことが判り、完全に帰れることを確認した。舌打ちこそしな
かったが、フェリーが欠航していればもう何日か滞在できたの
になどと少しがっかりした。しかし、道内の災害や農業被害の
可能性を想像すると、そんな不埒な考えは想像でも許されない
と反省した。今回は日程が短かったことで忙しくなってしま
い、休日を楽しむというよりも、日々追われているような感覚
があった。長い休みでいいねぇという声が多いが、毎日3時4時
に起きて撮影に入るので仕事みたいなもんですと言うと、会社
の先輩には『漁師かお前は』と突っ込まれた(^_^:
今回はそれなりの成果もあったが、やはり日程的に2週間は
欲しいところだ。戻ったら冬の陣の計画を立てよう。そして、
それが明日の仕事の支えとなり、毎日頑張ることができる。 
ユキホオジロ